謡曲「三輪」

12月2日/

◆<三輪山の 杉に神やどる  衣着て>

・大和国三輪の山蔭に玄賓(げんぴん)という僧都が住んでいた。その玄賓を、樒(しきみ)を持ち閼伽)(あか)の水を汲んで毎日訪ねて来る女人がいた。玄賓は不審がり名を尋ねようと思っていると、今日も訪ね来た。秋の夜寒に女人は玄賓に衣を一枚賜りたいと頼む。玄賓はたやすいことと衣を与えた。女人は喜び、帰り際に玄賓が問うと、「三輪の里に住んでいる、杉立てる門を目印にお越しあれ」と言い残し姿を消した。

・さても三輪明神に参詣した里の男が、ご神木の杉に玄賓の衣が掛かっているのを見つけて知らせた。玄賓が杉の所へ来て確かめると、自分の衣が杉の木に掛かっており歌が縫い付けられていた。そのとき杉の木陰から美しい声がして、女体の三輪の明神が現れた。くだんの女人は明神の化身だったのだ。明神は玄賓に向かい、「神も衆生を救うために迷い、人と同じに苦しみを持っている、罪を救って欲しい」と言う。そして三輪の里に伝わる神と人との夫婦の昔語を語り、さらに天の岩戸の神話を語って神楽を舞う。やがて夜が明けると、僧は今まで見た夢から覚め、明神の姿も消えていた。

・大和国三輪は、今の奈良県桜井市。三輪山は三輪明神の鎮まる古来より人々の信仰を集まる霊地である。

・「樒」は常緑の毒を持つ木である。「閼伽の水」とは仏前に供える供養の水。功徳の水である。

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