日別アーカイブ: 2021年11月22日

謡曲「花筐」(はながたみ)

11月23日/

◆<花筐 ゆかしき形見 天の川>

◆<現なれ ゆかしき形見 花筐>

・越前国味真野に応神天皇の子孫である男大迹(おおあとべ)皇子が住んでいた。

・皇子は武烈天皇より皇位を譲られ(継体天皇450?〜531?)急遽都へ旅立った。

・継体帝は使者をして当地で寵愛した照日の前に、手紙と愛用品の花筐を届けた。

・照日の前は喜び、帝の即位を祝しつつ突然の別れを悲しんで自分の里に帰った。

・大和国玉穂の都に遷都した継体帝は秋の良き日に、官人を引き連れ紅葉見物に。

・そこに照日と侍女が・・・。照日は帝への思慕が募り狂女となり都を目指していた。

・狂女照日が帝の前に飛び出す。官人が押し止め、侍女の持つ花筐を叩き落とす。

・照日はそれを咎め「君愛用の花籠を打ち落とすとは自分より狂っている」と言う。

・官人は帝の宣旨を受け照日に対し、帝の前で面白く狂って舞い遊ぶよう告げる。

・照日は喜びの舞を舞い、漢の武帝と李夫人の悲恋を物語り帝への恋心を匂わす。

帝は花籠が自分の愛用品だったと確認し、照日の狂気が止めば側に呼ぶと伝える。

・照日は帝に感激し正気に戻る。かくして二人は玉穂の都へ一緒に帰って行った。

・爾後、花筐の名を留め置き、愛しい人の愛用品を形見(かたみ)と呼ぶようになる。

・(注1)味真野は今の福井県越前市味真野町辺り。玉穂は奈良県桜井市池之内辺り。

・(注2)花筐は、はながたみ、と読む。 花籠のこと。

・(注3)男大迹は、おおあとべ、と読み、大迹部 とも書く。

謡曲「松虫」

11月22日/

◆<友と人生 酒と松虫が 綾を成し>

・摂津国 阿倍野の市。市の酒売りの所へ大勢で現れ酒宴をする若い男らがいた。

・酒売りはどんな者達か不審がっている。松虫の鳴く秋の寒い朝に、男らが来た。

・酒売りは、白楽天が”酒功賛”を作り琴・詩・酒を愛で合う友を持った心境でいた。

・「又かの人がきた」と酒売りは喜び、「今日は酒を堪能し早く帰らないで」と頼む。

・温め酒を飲みつつかの人(男)は言う。「秋は千年も限りなく松虫の音も尽きない→

・壁生草(いつまでぐさ)の何時までも変わらぬ友こそ、この市で買った宝だ」と。

・酒売りは「今の『松虫の音に友を偲ぶ』との言葉には何か謂れがあるか」と聞く。

・男が語る。「昔、阿倍野の原を2人の男が通りかかり、1人が松虫の声が面白いと→

・聴きに行き帰って来ない。心配してもう1人が探しに行くと草の上で死んでいた→

・死ぬときは一緒にと思っていたのに、何ということかと泣き悲しんだ・・・」と。

・さらに言う。「友を偲んでいたことが世に漏れ悲しい。今は亡霊の身である」と。

・古歌があるーー。「秋の野に人まつ虫の声すなり 我かと行きていざとむらはん」。

・この古歌に例えて、男はそう思ってくれる人々がいれば有難いと言って消えた。

  ※ここで「間狂言」が入る(この項、ネット『銕仙会 能楽事典』を参考)。

〇そこへ酒売りの常連客がやってきた。酒売りは客に「松虫の音に友を偲ぶ」故事に

 ついて聞きたいと言い、客は二人の男の物語を語って聞かせる。酒売りが先刻の

 不思議な男の話をすると、客はその者こそ昔の男の霊であると言い、男を弔って

 やるよう言い残し帰って行った。

・松風寒い原で酒売りが男のため弔いをしていると、男が現れて弔いを感謝する。

・弔う人も弔わる人も同じ難波人・・・・・男は変わらぬ契りの友を思って懐かしんだ。

・酒を酌み交わし男は喜悦の舞を舞う。松虫の声を聞きつつ友を待ち詠をなして。

・明け方、難波の鐘が鳴った。男の霊は「さらばよ友人」と言い残し消えて行った。

・(注1)ここに登場する松虫は今の鈴虫。松虫の「まつ」は人を「待つ」との掛詞。

・(注2)「秋の野に…」の歌は、『古今和歌集』に収載。

・3連目の「白楽天」に関しては、ネットに多くの以下の記述がある。ご参考に。

 <和漢朗詠集> 
  「唐太子賓客白楽天 亦嗜酒作酒功賛以継之」
  読 唐の太子の賓客白楽天また酒を嗜んで 
    酒功賛を作って以てこれに継ぐ
  訳 唐の太子賓客たる白楽天もまた酒好きで、
    酒功賛を作ってそのあとにつぐのです。