11月22日/
◆<友と人生 酒と松虫が 綾を成し>
・摂津国 阿倍野の市。市の酒売りの所へ大勢で現れ酒宴をする若い男らがいた。
・酒売りはどんな者達か不審がっている。松虫の鳴く秋の寒い朝に、男らが来た。
・酒売りは、白楽天が”酒功賛”を作り琴・詩・酒を愛で合う友を持った心境でいた。
・「又かの人がきた」と酒売りは喜び、「今日は酒を堪能し早く帰らないで」と頼む。
・温め酒を飲みつつかの人(男)は言う。「秋は千年も限りなく松虫の音も尽きない→
・壁生草(いつまでぐさ)の何時までも変わらぬ友こそ、この市で買った宝だ」と。
・酒売りは「今の『松虫の音に友を偲ぶ』との言葉には何か謂れがあるか」と聞く。
・男が語る。「昔、阿倍野の原を2人の男が通りかかり、1人が松虫の声が面白いと→
・聴きに行き帰って来ない。心配してもう1人が探しに行くと草の上で死んでいた→
・死ぬときは一緒にと思っていたのに、何ということかと泣き悲しんだ・・・」と。
・さらに言う。「友を偲んでいたことが世に漏れ悲しい。今は亡霊の身である」と。
・古歌があるーー。「秋の野に人まつ虫の声すなり 我かと行きていざとむらはん」。
・この古歌に例えて、男はそう思ってくれる人々がいれば有難いと言って消えた。
※ここで「間狂言」が入る(この項、ネット『銕仙会 能楽事典』を参考)。
〇そこへ酒売りの常連客がやってきた。酒売りは客に「松虫の音に友を偲ぶ」故事に
ついて聞きたいと言い、客は二人の男の物語を語って聞かせる。酒売りが先刻の
不思議な男の話をすると、客はその者こそ昔の男の霊であると言い、男を弔って
やるよう言い残し帰って行った。
・松風寒い原で酒売りが男のため弔いをしていると、男が現れて弔いを感謝する。
・弔う人も弔わる人も同じ難波人・・・・・男は変わらぬ契りの友を思って懐かしんだ。
・酒を酌み交わし男は喜悦の舞を舞う。松虫の声を聞きつつ友を待ち詠をなして。
・明け方、難波の鐘が鳴った。男の霊は「さらばよ友人」と言い残し消えて行った。
・(注1)ここに登場する松虫は今の鈴虫。松虫の「まつ」は人を「待つ」との掛詞。
・(注2)「秋の野に…」の歌は、『古今和歌集』に収載。
・3連目の「白楽天」に関しては、ネットに多くの以下の記述がある。ご参考に。
<和漢朗詠集>
「唐太子賓客白楽天 亦嗜酒作酒功賛以継之」
読 唐の太子の賓客白楽天また酒を嗜んで
酒功賛を作って以てこれに継ぐ
訳 唐の太子賓客たる白楽天もまた酒好きで、
酒功賛を作ってそのあとにつぐのです。