月別アーカイブ: 2021年10月

謡曲「籠太鼓」

10月21日/

◆<籠太鼓 打つほどに妻 舞ひ盛る >

・殺人の罪で主君・松浦某の牢に繋がれていた関の清次は、番人の隙を突き脱獄。

・某は妻を尋問するが「知らぬ」と。そこで妻を牢に繋ぎ時を告げる鼓を掛ける。

・妻は牢の中で気が狂う。同情した某が牢から出すも妻はなおも狂乱し鼓を打つ。

・見かねた某が夫婦ともに赦すと誓う。妻は喜び夫の元へ。狂乱は偽りだった。

・本作は、夫を恋い慕って狂乱する女を描く狂女物の1つ。でも、偽りの狂気だ。

・清次の脱獄を某に報告するセリフ「抜けてござる」(抜けて候)に関し一言・・・。

・『道成寺』の「落ちてござる」、『安達原』の「見てござる」と共に「三ござる」。

謡曲「忠度」(ただのり)

10月20日/

◆<歌人の名の 消され忠度 能となり>

・勅撰和歌集「千載集」の選者・藤原俊成に仕え,死後に出家した旅僧が西国行脚へ。

・旅僧一行は須磨の浦に立寄り一本の桜の木を見る。そこへ一人の老人が現れる。

・桜木に花を手向けて祈る老人に旅僧は語り掛ける。日が暮れ、一夜の宿を頼む。

・老人は平忠度の歌を引き合いに出し、桜の木陰を宿に勧め、桜木の来歴を語る。

・薩摩の守忠度の墓標なのだ。僧が回向すると老人は喜び花の陰に消えて行った。

・夜、旅僧の夢に忠度が現れ、自作歌は千載集で「詠み人知らず」にされたと嘆く。

・ぜひに作者名を入れるよう、俊成の子の藤原定家に伝えてほしい、と僧に頼む。

・忠度は一の谷の合戦で討ち死にした様子を語り、桜の木の下へと帰って行った。

・主人公・忠度は武勇の誉れ高く優れた歌人でもあり、勅撰和歌集千載集に入選。

・なのに戦いに負け朝敵になり名前が葬られた・・怨念が人生を支配した時代?

謡曲「紅葉狩」

10月19日/

◆<紅葉狩り 美女の盃 妖しけれ>

・長月、山中で上臈(高貴な女)達が紅葉狩をしている所へ平惟茂一行が鹿狩りに。

・維茂は宴の幕を避けようとするが、上臈達に「是非一緒に」と誘われ宴に加わる。

・この世の者と思えぬ美しい女に酒を勧められ維茂は酔いつぶれ、眠ってしまう。

・夢から覚めた維茂の前に鬼神が現れ襲いかかる。 維茂少しも騒がず立ち向かう。

・ 維茂 は南無八幡大菩薩と心に念じ、鬼神と剣を抜いて戦い鬼神を退治した。

謡曲「阿漕」

10月18日/

◆<生きるため 罪科阿漕に 尋ねみん>

・日向の旅人が伊勢神宮参詣に行き、阿漕が浦(三重県津市阿漕町)で老漁師に会う。

・昔、阿漕という漁師が禁漁区で漁をし捕まり沖に沈められた伝説を聞かされる。

・自分が阿漕の亡霊だと。その罪科の地獄の苦しみを語り、たすけ給えと消える。

謡曲「大仏供養」

10月17日/

◆<大仏供養 悪七郎の 仏ごころ>

・奈良春日の里。再建成った東大寺の大仏供養に平家武将・悪七兵衛景清が来る。

・源平合戦で焼け落ちた東大寺を再建した頼朝を狙う景清は、白装束に烏帽子姿。

・装束の下の鎧で正体がばれ、景清は若武者頼朝と斬り合い終に春日山に逃げる。

・聖武天皇の東大寺建立は752年、平治の乱は1159年。当能は「景清」と対を成す。

・春日の里に帰った景清は真っ先に母と会う。「若草辺に待つ母」と詞章麗しく。

謡曲「殺生石」(せっしょうせき)

10月16日/

◆<野干よ悪 那須に成さずや 殺生石>

・高僧玄翁が下野国那須野の原へ来て、ある石のそばを飛ぶ鳥が落ちるのを見る。

・女が現れ玄翁に石は殺生石と言い、近づく生き物を殺すので近寄るなと告げる。

・女が殺生石の由来を語る・・・鳥羽の院時代の昔、玉藻の前という宮廷女官がいた。

・才色兼備の玉藻を院は寵愛。でも陰陽師安倍泰成に狐の化身と見破られ逃げた。

・那須野の原で討たれ魂が殺生石となった。自分が玉藻の前の霊だと言い消える。

・玄翁が石魂を仏道に導こうと法事を行うと野干(やかん=狐)の精霊が現れる。

・野干は唐・天竺・日本で世を乱し、撃たれ、殺生石となり人を殺したことを反省。

・玄翁に仏法を授けられ、悪事はせぬ約束を結ぶ石となり狐の鬼神は消えて行く。

謡曲「江口」

10月15日/

◆<白雲呼び 人の道説く 江口の君>

・旅僧の一行は摂津国・天王寺参詣の途中、淀川を下った江口の里で一宿を乞う。

・娼館の宿場の長・江口の君は西行法師の一宿を断ったエピソードで有名だった。

・旅僧が「世の中を厭ふまでこそ難からめ仮の宿りを惜しむ君かな」と口ずさむ。

・あの時の西行の歌である。そこへ女が現れ自分が江口の里(亡霊)だと明かす。

・娼館ゆえ西行には遠慮したと。そして俗世の話は捨て置くように言って消えた。

・旅僧が里男に聞くと、江口の君は普賢菩薩の生まれ変わりだという話もあると。

・旅僧が弔っていると、江口の君の亡霊が侍女の霊と共に屋形舟に乗って現れる。

・絢爛豪華な舟遊びである。江口の君は、因果応報、諸行無常を説き、舞を舞う。

・やがて江口の君は、執着を離れれば悟りを得ると語って、普賢菩薩の姿に変身。

・舟は白い象に変わり普賢菩薩はその白象に乗り白雲と共に西の空へ飛び立った。

謡曲「實盛」

10月14日/

◆老いて實盛 白髭染めて 斬り合えり>

・諸国行脚の遊行上人が加賀国篠原で説法を行うと、老翁が一人毎日聴聞に来る。

・上人が翁に問うとしぶしぶ平家方の武将であった齋藤別当實盛(亡霊)だと名乗る。

・2百年程前、自分は源平の篠原合戦で討たれ首は篠原の池で洗われた等と明かす。

・木曽義仲の前で首が洗われると、 黒い鬢髭は墨が流れ白の 鬢髭 が露になったと。

・また戦には赤の錦の直垂を着て赴いたと武将の矜持を語り、弔いを乞い失せた。

・平家物語が基にあり實盛討死の約230年後の1414年、都中に不思議な噂が流れた。

・ 篠原に實盛の幽霊が現われ遊行上人から十念を授かった噂が世阿弥を動かした?

謡曲「三井寺」

10月13日/

◆<三井寺の 鐘撞く母の 眼の先に>

・秋の清水寺。駿河の清見が関から来た女が観音様に祈りつつまどろみ夢見する。

・わが子の千満を探す女の夢見を門前の者が占い、近江の三井寺へ急げと告げる。

・旧暦8月15日の月見の日。僧らの中に千満がいるのを鐘楼に上った母が見つける。

・名月の下で狂乱の舞を舞い鐘楼で鐘を撞く必死の女。母子目出度く故郷へ帰る。

謡曲「定家」

10月12日/

◆<定家の 葛に抱かれし 才女かな>

・旅僧が北国から京へ。夕景に居ると時雨が来て由緒ありげな建物で雨宿りする。

・里女が現れ、そこが藤原定家の建てた「時雨のちん」だと教え霊を弔うよう勧める。

・さらに里女は式子内親王の墓へ導き、墓に絡み付いた「定家葛」の謂れを語る。

・内親王と藤原定家に深い契りがあり、二人の死後その執心が葛になっていると。

・里女は自分が内親王と告げ消える。二人は同時代の歌人。契りが真実かは不明。

・内親王の歌「玉の緒よ絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする」